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ニーム・カロリ・ババの物語65 真実は、もっとも困難な苦行である。

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真実を話すこととニーム・カロリ・ババとのエピソードです。
 
ラム・ダスの世界的なベストセラーである「ビー・ヒア・ナウ」のエピソードを後半にご紹介していますが、人から聞いた話というのは、当てにならないものです。
 
私も過去に、人からいろんな話を聞いて、本人に確かめてみると、全く違う話だったということが何度もありました。
 
ですから、人から聞いた話は信じないようにしています。
 
特に、書籍として出版されるということは、それを後で訂正することが難しくなるので、間違いのないように気をつけなければなりません。
 
 
インド思想では、真実というのは、サティヤと言います。
 
これは、ヨーガの戒律の一つになっています。
 
この戒律が難しいのは、人を騙すだけではなく、自分を騙すのが人間の特性だからです。
 
この自分を騙すということを、いかに乗り越えることができるのか、というのがこの戒律の重要なポイントです。
 
 

完全な真実が必要である。
おまえは、自分が話す言葉によって、生きなくてはならない。

 

真実は、もっとも困難な苦行である。
真実を話せば、憎まれるだろう。
人びとは、おまえの悪口を言うだろう。
殺されることさえ、あるかもしれない。
しかし、真実を話さなければならない。
真実に生きれば、神はつねにおまえの味方をするだろう。

 

キリストは、真実のために死んだ。

 

どうしたら心を浄化することができるかと質問されて、マハラジは言いました。
「いつも真実を話しなさい」

 

ある男性が、マハラジを訪ねてきました。
マハラジは彼に、アシュラムの煉瓦をつくるために援助してくれないかと頼みました。
しかし、男は自分には何も財産がないと言って、帰っていきました。


しばらくすると、その男がマハラジのところに駆けつけてきて、自分の店が火事で燃えていて、破産してしまうと泣きついたのです。


「おまえは、何も財産がないと言っていたではないか!」
 

「そうです、嘘をつきました……」
 

「今度も嘘だ。

店は焼けていない」
 

男が帰り、店に戻ってみると、トウガラシの袋がひとつ燃えていただけでした。

 

ダダの義理の姉妹が訪ねてきたとき、マハラジは私を彼女のいるタケットまで呼ぶと、彼女を指さして「覚えているか」と聞きました。
本当は覚えていませんでしたが、そう答えるのは悪いような気がして、私はさも知っているかのように微笑みました。
マハラジも、うなずくかのように微笑み、「そうだ、彼女はダダの義理の姉妹だ」と言いました。


私のずる賢さが頭をもたげました。
ダダの義理の姉妹ならば、おそらくダダが住むアラーハーバードで会ったのだろうと推測し、「そうそう、アラーハーバードでお会いしましたね」と言ったのです。
すると彼女は言いました。
「いいえ、アラーハーバードでは会っていませんわ。この前の春に、ケンチでお会いしました」
私は恥ずかしさで真っ赤になりました。


マハラジは私のほうを向くと、指をあげました。
このとき、その指ははっきりとこう指摘していたのです。
「つかまえたぞ! 気をつけなさい!」

 

『ビー・ヒア・ナウ』の初版が届くと、私はそれをマハラジに渡しました。
マハラジは、本を部屋に置くようにそばの人に言うと、それ以上私には何も言いませんでした。
五ヵ月後、私は寺院の裏手に呼び出されました。
タケットのところに行くと、マハラジが手に本をもっています。
そして最初にひと言、「おまえは嘘を印刷している」と言ったのです。

 

「そんなことはありません、マハラジ。

この本の内容はすべて真実だと思います」
 

「いや、嘘がある」
 

マハラジは、非難するような口調で言いました。
 

「それはまずいですね」


私はマハラジが本気で話しているのかどうか確信がもてず、困惑しました。
それで、「マハラジ、どんな嘘ですか?」と聞きました。


「この本には、ハリ・ダスが寺院を建てたと書かれている」
 

「ええ、彼がそうしたと思ったものですから」
 

そのとき、マハラジは近くに座っていたインド人を手招きすると、「おまえはその寺院と、どんな関係があるかね?」と言いました。


「私か建てました、マハラジ」
 

まるで尻尾を捕まえたぞと言わんばかりに、マハラジは私を見ました。


「それからおまえは、ハリ・ダスが八歳のときにジャングルに入ったと書いた」


マハラジはそう言って、もう一人を前に呼ぶと、ハリ・ダスが森林局で事務員として数年働いていたことを確かめました。
 

「でも、ハリ・ダスが八歳でジャングルへ入ったと、人から聞いたのです」


私は、下手な弁解しかできませんでした。
マハラジは何度も何度も私が書いた間違いを、目の前に突きつけました。
そして、最後にこう言ったのです。


「おまえは人が言ったことをすべて信じこんだ。
単純なヤツだ。
西欧人なら大抵、確認するはずだ。
この間違いをどうする?」

 

私の心は、さまよいはじめました。
いったい何ができるというのでしょうか?
初版の三万部はもうすでに本屋にあり、訂正することなどできません。
しかし、スティーブ・ダーキーの手紙では、もう三万部増刷するところだと書かれていました。
私は「手紙を書いて、つぎの版では間違いを削除するようにします」と言いました。


「よろしい。

そうしなさい。

嘘と関わると、おまえが傷つくことになる」
 

マハラジはそう言ってから、別の話題に移りました。

 

私は本の訂正箇所を調べ、ニューメキシコにある出版元のラマ・ファウンデーションのスティーブに手紙を書きました。
二つの段落を削除するだけでよさそうでした。
それほど重要な変更ではないと思いましたが、『ビー・ヒア・ナウ』はマハラジの本だと考えていたので、マハラジが変更を望むのであれば、そうするよりほかにありません。

 

二週間ほどすると、スティーブからの返事が届きました。
そこには、つぎの版では変更できないと書かれていました。
スティーブが、タオス北部の山にあるラマ・ファウンデーションで私の手紙を受けとったとき、彼はアルバカーキの印刷業者からちょうど戻ってきたところでした。
そこで再版の準備をしてきたのです。
印刷業者は好意で作業を急いでくれ、翌日には印刷、裁断、製本という一連の作業が行われていたはずでした。
スティーブは帰る途中に二日間ほかの仕事をしてきたので、印刷業者と話していませんでしたが(ラマには電話がありません)、その作業はすでに完了していることがわかっていました。
しかしスティーブは、三、四ヵ月後に印刷する予定の版では、かならず変更すると保証していました。

 

手紙をジョーラ(ショルダーバッグ)に入れて、私は朝早くバスでケンチの寺院に行きました。
寺院に到着すると、マハラジは「手紙には何と書いてあった」と大声で話しかけてきました。
マハラジのこういう遊びは、いつもユーモラスに思えました。
というのも、手紙があることを知っているのですから、内容はすでにわかっているはずなのです。
私にそれを言わせたいだけなのでした。


私が話し終えると、「すぐに変更しなさい」とマハラジは言いました。
私は印刷工程について辛抱強く説明を繰り返し、この三万部については変更できないと言いました。
しかし、「すぐに変更しなさい」とマハラジは繰り返しました。
私は、いま変更すれば、三万部の本をみんな捨ててしまうことになり、少なくとも一万ドルの損失になると説明しました。

 

これに対するマハラジの答えは、つぎのようなものでした。
「お金と真実とは互いに何の関係もない。
いますぐ変更しなさい。
最初に印刷したときは、おまえはこれが真実だと思っていた。
しかし、いったんそうではないと知ったからには、嘘を印刷することはできない。
嘘を印刷すれば、おまえが傷つくことになる」

 

マハラジがすぐに変更を望むのであれば、そうするしかありません。
でもそうなれば、ラマ・ファウンデーションは、利益をみんな失うことになります。
おそらく、そのことで大喜びする者はいないでしょう。
しかし、つまるところ、利益はすべてマハラジのおかげなのです。
まだ朝の九時前でしたが、マハラジは私を寺院から送り出すと、「すぐに変更しなさい」と、もう一度念を押しました。

 

ヒッチハイクでナイニタールに戻り、この新しい指令を電報でスティーブに送りました。
一週間ほどたつと、スティーブからの返事が届き、とても不思議なことが起こったと伝えてきました。
スティーブが郵便局に行くと、私の電報と印刷業者からの手紙がいっしょに届いていました。
手紙によると、スティーブが印刷業者のところを出るとすぐ、業者は約束どおり再版の印刷に取りかかったそうです。
しかし、ある1ページ分の版が消えているのが見つかりました。
それはマハラジの写真ページでした。
業者は原版にあたれば、もう一度版をつくれると考え、ファイルを調べましたが、驚いたことに、そのページは原版からも消えていたのです。
困った業者は印刷を中断し、指示があるまでそのままにしておきました。
ですから、その二カ所の変更は電話一本で片づき、私か心配した一万ドルの損失にはならなかったと、スティーブは締めくくっていました。
私はこの知らせをもってマハラジのところへ駆けつけましたが、その日もその翌日も、マハラジは私に話す機会をあたえてくれませんでした。

 
(出典:「愛という奇蹟」ラム・ダス編著 パワナスタ出版)

 


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