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非現実的なポジティブ・シンキングの弊害

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ポジティブ・シンキングが流行した当時、物事をポジティブに考えれば、それだけで全てがうまくいくといった思い込みが広がりました。

 

確かに、ポジティブ・シンキングには、私たちの幸福度を高め、前向きな気持ちを生み出す力があると思います。

 

しかし、何事も万能なものなはなくて、間違って使ってしまうと、逆効果になることがあります。

 

 

幸福研究の権威であるエド・ディーナー(2003年)は次のように述べています。

「楽観的になりすぎることは、個人にとって好ましくない可能性がある。

もしかすると人々は、楽観性と悲観性をあわせもったほうがうまくいくのかもしれない」


ポジティブ心理学に対しておそらく最も著名な批評家、バーバラ・エーレンライク(2010年)はさらに論を進め、ポジティブな、あるいは楽観主義的な考え方こそが、金融危機や慢性的な病気の悪化を引き起こすとしています。

そしてたとえ幸福を阻む本当の原因が自分たちにはとうてい手に負えないものであったときでも、「自己改革のため」と言って莫大なお金をつぎ込ませるのだと指摘しています。

 

 

行き過ぎたポジティブ・シンキングには、弊害があると思います。

 

また、それが高額な自己啓発セミナーなどのコンテンツになっていたりしますから、金儲けの手段にもされています。

 

ポジティブ・シンキングに弊害が出る場合は、どのようなケースなのかを適切に分析して、リスクを最小限に留め、メリットを最大化させることが重要だと思います。

 

 

サンドラ・シュナイダーは現実的な楽観主義と非現実的な楽観主義を比べて詳細に述べ、「あいまいな知識」と「あいまいな意味合い」の違いを説明し、現実把握の重要性を強調しています。

「あいまいな知識」とは事実を知らないということで、一方「あいまいな意味合い」とは解釈に幅があるということです。

楽観主義は、あいまいな知識を取り扱うのによいやり方とはいえません。

たとえば、あなたが自分のコレステロール値を正確には知らないのに、自分には心臓疾患の心配はないと決めつけるのは理にかなっていないでしょう。

しかしながら、人生で起きるたくさんの状況は実際、自由に解釈することができます。

そしてその解釈にこそ、楽観主義が効果を発揮するのです(シュナイダー2001年)。
 

実際、シュナイダーとセリグマンは二人とも、出来事を解釈する際には、考え方に柔軟性を持たせるべきだというまったく同じ主張を唱えています。

したがって、多くのレジリエンスのプログラムは、楽観主義の理論をベースとし、不幸な出来事が起きた際の習慣化した自分の説明スタイルに疑問を持つようにと、参加者に指導しています。

 

 

「あいまいな知識」というのは、現実を見ないで、非現実的なポジティブ・シンキングをしてしまうことでしょう。

 

別の言い方をすれば、ポジティブ・シンキングが現実逃避の手段になっているということです。

 

これでは、現実の部分で折り合いがつかなくなり、どこかで破綻することになると思います。

 

「あいまいな意味合い」というのは、現実をきちんと見極めて、解釈を楽観的なものにしていくということです。

 

これは、現実逃避ではなく、解釈によって心をコントロールしているわけですから、心の制御技術の一つです。

 

 

ポジティブ・シンキングだけではなく、どのような思想も同じですが、現実を踏まえて、日々の人生を豊かにしていくために利用すべきものが、現実逃避の手段になってしまうことがあります。

 

ですから、どのような思想でも、あまり過剰に囚われ過ぎないようにして、良い部分だけを柔軟に取り入れていくというスタンスで、リラックスして取り組むことが大切だと思います。

 

 

(出典:「ポジティブ心理学が1冊でわかる本」イローナ・ボニウェル著 国書刊行会)

 


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